日本は戦後、高度経済成長を成し遂げ、生活習慣も大きく変化し、生活習慣病の一つといわれる糖尿病の発症頻度も著しく増加しました。
糖尿病の発症頻度の増加は、戦後の生活様式の変化に関係がないとはいえず、その変化を2つの言葉で言い表すことができます。
1つめは『モータリゼーション』。これは自動車の普及により運動量が少なくなったという事です。日本の自動車普及台数と同じく、糖尿病の有病率もここ35年の間に約30倍に増加しています。
2つめは『飽食の時代』。これは食生活において、特に生活様式の欧米化に伴う動物性脂肪の摂取の増加です。こうした生活習慣の変化は、インスリンという血糖を下げるホルモンが効きにくい状態になり、血液のブドウ糖(血糖)が増加し、中年以降におこるインスリン非依存性糖尿病を起こします。
そして、糖尿病による高血糖が長期間持続することでおこる特徴的な、糖尿病が原因の合併症のことを3大合併症といいます。3大合併症とは、『網膜症』『腎症』『神経障害』のことです。いずれも生活する上で重大な障害をきたすため恐れられていますが、自覚症状がない場合が多く、気づかないうちに進行してしまう例が多いようです。
高血糖で起こる神経障害は、身体の末端の方まで伸びている『末梢神経』に現れ、糖尿病の治療が不十分なときには、傷みを感じる『感覚神経』や筋肉を動かす『運動神経』、心臓や胃腸の働きを整えたり、血圧や体温をコントロールする『自律神経』の3つの抹消神経に障害が起きます。
しびれや傷みなどの感覚神経の障害に気付くのは、次の様な症状からです。
両足の先のしびれや冷え、または逆に熱くなる。手足の感覚が鈍る(自分では気づきにくい)。足の裏に紙が貼り付いている様な感覚や虫が這っている様な感じ。坐骨神経痛や肋間神経痛、腕や手の神経痛などが起こる。
いずれも比較的初期の段階で気付きますが、この時に適切に治療することが大切で、放置したり市販薬などで自己治療を続けていると悪化してしまいます。
3大合併症の起こる頻度を減らすには、原因を考えてきちんと改善することが大切です。3大合併症を起こす原因は、高血糖、高血圧などで、特に高血糖のコントロールが重要です。
糖尿病は食事療法、運動療法、薬物療法などで血糖をきちんとコントロールすることで3大合併症発症率を減少できます。
糖尿病の発症原因 は肥満(特に内臓脂肪蓄積型肥満)、運動不足、過食、高脂肪や動物性脂肪中心の食事、ストレス、妊娠、遺伝、加齢などが挙げられます。また、都市型の食習慣や、ライフスタイルなどの問題も糖尿病の原因と考えられます。
特に家族に糖尿病の方がいたり、高齢、糖尿病予備軍(境界型糖尿病)の方などは要注意です。厚生労働省の調査では60歳以上の高齢者では、約4人に1人は糖尿病または予備軍という結果です。
糖尿病は血糖が高くなる病気ですが、高血糖の状態が続くと身体に様々な合併症が起きます。
3大合併症には眼底出血を起こす『網膜症』、尿にタンパクが現れる『腎症』、全身の神経に故障を起こす『神経障害』がありますが、糖尿病に伴う合併症がある程度進んでいても自覚症状がない場合が多いので知らないうちに進行してしまいやすいのです。また、3大合併症以外に重要な合併症は、『動脈硬化』です。
動脈硬化が原因で起こる病気は、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、下肢の閉塞性動脈硬化症などです。糖尿病の人は、そうでない人の約2〜4倍の割合で動脈硬化を起こしやすいようです。
そして糖尿病予備軍でも、糖尿病と同じように動脈硬化を起こしやすく、肥満、高血圧、高脂血症で、インスリンが効きにくいので、これらを解消し改善することで将来糖尿病や糖尿病の合併症を予防し、動脈硬化性疾患の予防にもなるのです。
糖尿病が招く合併症 のひとつである『糖尿性網膜症』は網膜の合併症です。網膜の血管から眼の奥に出血をおこし、 視力障害やひどければ失明という事態を招きます。
昔は、糖尿病の合併症『糖尿病性網膜症』を止める有効な手段がなかったため、『糖尿病性網膜症』になると失明すると言われ怖い病気だと考えられていました。現代は医療の進歩により糖尿病が引き起こす網膜症の進行を防ぎ、失明を防止できるようになりました。ですが、その進歩にも関わらず自覚症状に乏しく手遅れになりやすいため、最近でも失明の原因の第1位は『糖尿病性網膜症』なのです。
糖尿病の合併症のひとつである『糖尿性腎症』は腎臓の合併症のことです。腎臓は通常、体内で作られる老廃物や毒をろ過し、尿として体外に排泄して身体のバランスを保っていますが、腎症が最も悪くなると尿毒症といって老廃物などが体内に蓄積し、生命に危険な状態になるため、人工透析が必要となります。現在、透析を新たに始められる患者さんで、約31%が糖尿病性腎症の方です。
糖尿病が招く合併症のひとつである『糖尿病性神経障害』は神経の合併症です。手足のしびれや足の感覚がにぶくなったり、異常な知覚や痛みを伴うこともあり、時には足の末端の組織が壊され黒くなるような壊疽を引き起こすこともあります。
私たちの身体の働きとは、体に必要なものを食べ、消化吸収し、カロリー(エネルギー)や、血や肉など体の細胞を作る材料として利用をすることです。そして、体にとって不要なものを尿や便という形で排泄をするのです。その中で、筋肉から出てくる不要なもの(ゴミ)が クレアチニンです。
通常、クレアチニンは腎臓から尿中に排泄されるので、腎機能(腎臓の働き)が悪くなると、体にたまってきて血中濃度が上昇します。
クレアチニンの検査は、採血をして検査します。腎機能が正常であれば0.6〜1.2mg/dl程度の数値になります。腎機能が低下すると次第にこの値が増加し、8.0mg/dlを超えると透析が必要になってきます。この値の逆数を計算すると大方の腎臓の働きがわかるのです(2なら1/2, 3なら1/3)。
クレアチニンは筋肉から出る“ゴミ”ですから、筋肉量の多い人、すなわち男性や体の大きい人は腎機能が正常でも、クレアチニンの数値は少し高くなるのが普通です。逆に女性や子供、お年寄りではクレアチニンの数値は低めです。クレアチアニンの正常値は男性で0.6〜1.1mg/dl、女性では0.4〜0.8mg/dlくらいです。
クレアチニンが多くなると、からだの免疫力が低下していき、いろいろな感染症にかかりやすい状態になります。感染症の予防のために、季節を問わずうがいを励行し、毎日入浴をしてからだを常に清潔に保つようにしましょう。
動脈硬化とは、動脈壁の内側がいろいろな 原因で傷害 され、コレステロールがたまり、動脈の壁が厚くなって狭くなることが原因となり、最終的につまって動脈硬化性疾患を引き起こします。これは、脳梗塞、心筋梗塞、狭心症、下肢の閉塞性動脈硬化症などの事です。
この動脈硬化で脳の血管がつまれば、脳梗塞が起こる原因となります。脳梗塞は片麻痺や言語障害、痴呆や嚥下障害を伴い寝たきりの原因になる場合もあります。心筋梗塞は心臓の血管がつまった場合で、激しい胸部圧迫感を感じ、放置すると命に関わります。糖尿病の人の動脈硬化は、そうでない人の2〜4倍の発症率です。
動脈硬化が腎臓に起きると、腎臓が悪化し顔や足が腫れて心臓も悪くなります。動脈硬化が足の動脈に起こると、足がしびれる症状になります。糖尿病に伴う動脈硬化性疾患は、高血圧、高脂血症、高血糖、肥満、喫煙、血中ホモシステイン高値などの原因から発症します。
これらの要因のうち『高血圧は食事の塩分摂取過多』、『高脂血症(特に血中コレステロール高値)や肥満は過食、動物性脂肪の摂り過ぎ、運動不足など』、『血中ホモシステイン高値は緑黄色野菜不足(葉酸欠乏)』などが関係し、生活習慣が原因です。動脈硬化の症状予防には生活習慣や食生活の改善が大切で、日々の摂生が大切です。喫煙も、動脈硬化や腎症を悪化させるので控えるべきです。